多くのFX投資家がPAMMやMAMといったマネージドアカウントに注目しています。
これらのシステムは、専門的なトレーダーによる運用を通じて、効率的かつ効果的な資産運用を行いますが、実際にはこれらの運用方法には、利用者にとっては非常に便利で楽に利益を得られる一方、見えないリスクとデメリットが潜んでいることを知っていますか?不透明な運用戦略や不十分なリスク管理は、予期せぬ損失を招く可能性もあります。
そこでこの記事では、PAMMやMAMのメリットとデメリットをわかりやすく解説し、それらを踏まえた上で運用は危険なのか?どんな問題があるのか?についてお伝えしていきます。
PAMMとMAMのFX運用の基本
PAMM(Percent Allocation Management Module)とMAM(Multi Account Manager)は、複数の投資家の資金を一つの口座で運用するシステム。プロのトレーダーが複数の口座を効率的に管理し、それぞれの投資家の資金比率に応じて利益や損失を分配することができます。
PAMMやMAMのメリットは、個々の投資家がトレーダーの専門スキルを活用できる点にありますが、運用の透明性やリスクの管理には特別な注意が必要です。
PAMMやMAMのマネージドアカウントの仕組み
PAMMはマスター口座の利益や損失を、各投資家ごとに資金比率に基づいて利益が分配される仕組み。一方MAMでは口座の権限や管理はユーザがそれぞれ行いますが、利益や損失は各投資家の口座にリアルに反映されます。
特徴 | PAMM | MAM |
---|---|---|
資金管理 | PAMMトレーダーのマスター口座 | 各投資家個人の口座 |
運用方法 | 投資家の資金比率に基づき利益と損失を配分します。 | 投資家の資金比率に基づき利益と損失がリアルに反映 |
取引履歴 | 見られない(損益の結果のみ) | すべて見られる |
透明性 | 運用の透明性が比較的低い。 | 運用の透明性は比較的高い。 |
一見、MAMの方が良さそうに見えますが、どちらのシステムもプロトレーダーに運用をお任せする自動運用であることには変わりなく一長一短があります。
投資家の目的や運用スタイルによって最適な選択が異なりますが、最近では取引履歴が見えないことで、運用するプロトレーダーにとっても、手の内が知られないことやメンタル的なプレッシャーも少ないことなどから、PAMMが主流となっています。
PAMMやMAMを運用する利点・メリット
専用のプロトレーダーが運用する安心
PAMMやMAMでは、専門のプロトレーダーが資金運用を担当します。証券会社の審査に通ったトレーダーなので、実力は確かな方が実際の運用を行います。
これにより、市場の機会を捉える高度な技術と経験を活用することができ、一般の投資家が自力で同等の成果を出すことが困難な場面でも、最適な投資判断によるトレードが期待できます。
自分で運用する必要が無い(お任せ運用が可能)
PAMMやMAMを利用することで、投資家は日々の市場分析や運用に関する煩雑な作業から解放されます。つまり、お任せ的な運用が可能になります。
プロフェッショナルによる運用を信頼することで、投資家は他の業務や私生活により多くの時間を割くことが可能になります。
FXの知識が不要(初心者でもOK)
PAMMやMAMといったシステムは、FX市場に精通していない初心者でも容易に投資を始めることができます。FX口座を作成したりといった最初の手続き作業は必要になりますが、その後は自分でFX運用はしないので、全くのFX初心者でも運用は可能です。
プロトレーダーが市場の動向を分析し、最適な運用戦略を実行するため、専門的な知識がなくても投資を進めることができるのはメリットです。
PAMMやMAMの運用に伴うデメリットは?
プロトレーダーも生身の人間で完璧ではない
プロトレーダーが運用するPAMMやMAMでは確かに安心とは言えますが、プロトレーダーも生身の人間です。完璧ではありません。
市場予測の失敗や戦略的なミスが生じる可能性があり、これが投資家の資産に直接的な影響を与えることがあります。PAMMやMAMを運用するトレーダーにとっても、自分だけの口座を運用するのではなく、自身のトレードの損益が直接的に多くの人の口座の資産運用に関わるため、それなりの精神的プレッシャーもあるでしょう。
そのため、プロと言えども、運用を委ねることには一定のリスクが伴います。
稼働のコントロールができない
PAMMやMAMといったシステムでは、運用を委託した各一般投資家は、具体的な取引タイミングや戦略についてのコントロールすることが一切できません。
特に、MAMの場合は、取引内容がMT4等で見ることができるので、自分で裁量取引を加えたいと思うことも多々あるかもしれませんが、それはできないということです。
すべてが運用しているプロトレーダーの取引判断に依存するため、自身の意向と異なる運用が行われることもあります。
運用手数料が必要になる
PAMMやMAMの運用は無料で開始できることが多いですが、成功報酬など追加の費用が発生します。基本的には毎月利益に応じて発生する仕組みで、15%〜35%程度の手数料が発生します(一部発生しないシステムもあります)。損益がマイナスの月は、手数料は発生しません。
これらの毎月かかる費用は、運用をお任せする仕組み上仕方ないこととは言え、投資収益を圧迫する要因となり得るため、全体のリターンを慎重に評価する必要があります。
出金は好きな時にできない
PAMMやMAMは、そのマネージドアカウントの性質上、資金の出金には制限が伴うことが多く、必要な時にすぐに資金を引き出すことができません。
該当のMAMやPAMMによっても違いますが、一般的には月に1回決められたタイミングで出金可能になることが多いようです。また証券会社のほとんどはポジションを保有していると出金に制限がかかるところは多いので、もしも運用しているプロトレーダーが大きな含み損を抱えて長く利確できない状況になっていた場合、出金可能日が延期になることもあるでしょう。
出金日が限定されることにより、資金の流動性が低下し、投資家の柔軟な資金管理が難しくなります。
FXの知識が向上しない
PAMMやMAMに投資することで、市場分析やトレーディング技術などの個人的なスキルが向上することはほとんどありません。自分でトレードしないので、よほど意識を高く持たないと知識はつかないです。
これにより、自立した投資判断能力の発展が阻害され、長期的に見て自己の投資技術の向上が遅れる可能性があります。
詐欺もある
PAMMやMAMは、金融庁の認可が難しい現状もあり、海外証券会社での運用がほとんどです。証券会社側でもPAMMやMAMが運用できる会社は限られています(PAMMだけ、MAMだけ、両方可能等違いはあります)。
運用できる証券会社は、信用問題にもなるので、基本的にはシステムを運用するトレーダーの審査はしっかり行っており問題ないものですが、中には証券会社も一緒になって詐欺を働く業者が海外証券会社には(ほんの一部ですが)あります。
取引履歴を改ざんしたり、勝手に損切りを発動させて資金を溶かすような事例も過去にあります。ここはその証券会社の信用や、ライセンスの有無等から信用できるのかどうか見極めることが大切です。
ある程度の長期間、順調に稼働していても、突然ある日、意図的にマイナス決済を連発してPAMMやMAMの資金を溶かす詐欺も何度か発生しています。利用する前に証券会社の評判を調べるのは大事ですね。
長く運用されている実績がほとんど無い
PAMMやMAMの運用は、そのほとんどが海外FX会社になりますが、そこまで長い歴史はありません。ここ数年で多くのPAMMやMAMが出てきていますが、実は長く運用されている実績(例えば3年以上等)はほとんどないんですね。
詐欺で意図的に資金が溶かされたケースも複数見受けられましたが、それは論外でしょう。
そうした悪どいケースは別にしても、先にも記載したように、どれほど実力のあるトレーダーとは言っても生身の人間。数多くのお客様の資金を委託されて運用するプレッシャーからか、適切な資金管理やリスク管理ができなくて、急変した相場に対応しきれず破綻させてしまうケースも少なくありません。最悪運用開始後、1・2ヶ月の短期で破綻したケースもあります。
プレッシャーは怖いですね。プロが運用していても破綻することもあるので、それだけFXは厳しい世界でもあります。
そうした可能性も想定すれば、PAMMやMAM運用における長期投資は非常にリスクが高いです。利益が出ているのは確かだとしても、出金までに破綻してしまえば、結局は全損と同じであり、投資している意味がなくなります。
つまり「いかに勝ち逃げできるか?」という運の世界になってきますので、投資信託のように長く複利運用できるものとは考えない方が良いです。
PAMMやMAM運用はデメリットが多く危険
PAMMやMAMの運用にはメリットもデメリットもありますが、信用できる証券会社であれば、お任せで運用できるメリットもあるので、「投資は自己責任」であることは前提として、はじめてみるのも良いかもしれません。
ただしこれまで記載してきたようにPAMM、MAMには重大なデメリットもあり、投資家にとってみれば、運用の透明性の欠如や資金管理の自由度の低さは、大きなリスクとなる可能性が高いと言えなくもありません。
出金タイミングは月1回等に限られるので、もしもマイナスの成績が続いた場合に、出金したいと思っていても、すぐには出金できません。そうこうしているうちに出金可能日が来る前にトレードが破綻してしまう…ということも起こり得ます。
同じ自動売買系でもFX自動売買(EAと呼ばれるもの)であれば、まだ自分でいつでも稼働を止めたり、出金はできるので、自分でコントロールできます。しかし、PAMMやMAMは自分でコントロールできません。そこはやはり大きなデメリットですね。
PAMMやMAMでは、利益が出ているうちに早めに出金して勝ち逃げできれば良いですが、優秀なトレーダーが運用していても破綻するケースも多いわけですし、出金タイミングも限られていることから、リスクはかなり高いと思った方が良いでしょう。
うまい話には簡単に乗らず、大丈夫なのか慎重に判断すべきですね。その上で、自己責任で運用判断をされるのなら、それも良いとは思いますが。
いずれにしても、安定してFXによる投資利益を得るためには、楽をせず、投資家自身がしっかりとトレード技術を身につけることが大事ですね。
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